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医療経営ワンポイント

会計でクリニックを強くする(7)2010:02:05:11:36:47

 前回は、人件費が支出の中で最も大きく、人件費のコントロールがクリニック経営に大きな影響を及ぼすというお話しをさせていただきました。では、人件費率(医業収益に対する人件費の割合)は低ければ低いほどいいでしょうか?
 低くするためには、「スタッフの人数を減らす。」か、「一人あたりの人件費を低く抑える。」のどちらかの方法が思い浮かびます。しかし、スタッフの人数を際限なく減らしていけば、どこかで十分な医療サービスの提供は困難になります。また、一人あたりの人件費を低くしていけば、いずれやる気のないスタッフばかりになってしまいます。また、新たにスタッフを採用しようとする場合、提示できる給与が低ければ、採用できるスタッフの質も落ちてしまいます。
 つまり、人員の削減は限界があるし、一人あたりの人件費はできれば高く維持したいということです。しかも、医業収益に対する人件費の率は低くしたい。一見、矛盾しているように思われますが、解決する方法が一つだけあります。

「医業収益を増やす。」これしかありません。

 患者様に喜ばれ、スタッフもイキイキと仕事をしてくれ、先生の収入も増える。それには、医業収益の増大しかないということです。医業収益は、「患者一人あたり点数×患者数」で決まります。患者一人あたり点数は、テクニックもありますが、その元になる点数は、厚生労働省が決めることであり、今後、長期的に見れば一部を除き、下がる傾向にあることはまちがいありません。したがって、患者様を増やしていくしかありません。患者様に選ばれるクリニック作りをしていかないと、医業収益の恒常的な増大は難しいということです。それには、先生のご努力もさることながら、より多くの優秀なスタッフが必要になります。そのためにも、一人あたりの人件費はむやみに下げられないということになります。

会計でクリニックを強くする(6)2010:01:26:11:04:22

 「クリニックの健全な発展のためには、正確な会計が大切です」というお話しを続けさせていただいています。前回は、クリニックの収益効率のお話しをさせていただきました。診療報酬も残念な結果にはなりましたが、ほんの少し上がるようです。ともあれ外部要因で収入が向上することは、歓迎すべきことですね。今回は、その収入の反対側、経費の中で、最も利益に大きな影響を及ぼす、人件費のお話しをしたいと思います。
 前回、医業収益から経費を引いた残りの利益が、医業収益全体のどれくらいにあたるかというお話しをしました。無床院外の個人クリニックでは36.7%、法人クリニックでは5.8%とお伝えしました。ということは、逆に考えますと、個人クリニックでは医療収益の63.3%、法人クリニックでは医療収益の94.2%が経費だということです。個人の63.3%のうち27.1%が人件費です。なんと経費の4割を占めます。法人の94.2%のうち58.3%が人件費、約6割を占めます。
 ここで、人件費に何を含むか定義をしっかりしておきたいと思います。個人クリニックの場合、従業員の給与・賞与、専従者給与、福利厚生費(社会保険料・雇用保険料を含む)、退職金です。
法人クリニックの場合、理事報酬、従業員の給与・賞与、福利厚生費(社会保険料・雇用保険料を含む)、退職金です。法人クリニックの人件費率が高いのは、理事報酬を含んでいるからです。また、厚生年金への強制加入による社会保険料負担も大きいと思います。ちなみに、無床院外の法人クリニックの理事報酬は、医業収益に対し平均で28.2%となっています。
 この医業収益の30%にのぼる経費をコントロールすることは、非常に重要です。昇給や賞与の額を年間いくらと定めているドクターもたくさんいらっしゃると思います。そのとき、今回、お話しした医業収益に対する人件費の率を意識することが大切です。
 数字で物事を判断しようと考える場合、判断の元になっている、その数字が正しいかどうかが重要な問題だとご理解ください。誤りを含んでいたり、歪んでいる数字を元にして、正しい判断ができないことは、EBMでも同じですね。
(数値は、TKC医業経営指標平成21年版)

会計でクリニックを強くする(5)2009:12:24:15:25:50

 前回、クリニックの業績をよくしていくためには、まず正確な会計を行い、経営数値を分析して改善点を把握した上で、改善に取り組むことが大切であるということをお話ししました。今回から、正確な会計ができているという前提で、経営数値の分析のお話しをいくつかさせていただきます。
 「経常利益」という言葉はご存知でしょうか?「いつもの利益」という意味です。診療報酬から、薬剤費、検査費、人件費、水道光熱費、支払利息などクリニックを運営していくために必要な費用を差し引いて残った利益を言います。ここで差し引く費用は、「いつも」の費用です。いつもの収入からいつもの費用を引いた、いつもの利益が経常利益です。したがって、自動車など固定資産を売却した利益・損失や、理事退職金の支払い等、特別な利益や損失は計算に入れません。このいつもの利益である経常利益は、クリニックの通常の収益力を示す重要な値です。
 医療報酬に対する経常利益の割合を医療収益高経常利益率と言います。数式は以下のとおりです。
医業収益高経常利益率=経常利益/医業収益

 医業収益高経常利益率は、医業収益がどのくらい経常利益を生み出したかを見て、収益性と経営効率を判断するための指標です。医業の収益性を総合的に表し、高率なほど効率的に利益を出していると言えます。
 個人の無床院外のクリニックの平成21年度の平均値は、全診療科で36.7%、内科35.8%、整形外科31.7%となっています。また、法人の無床院外のクリニックでは、全診療科で5.8%、内科5.7%、整形外科4.3%です。個人開業のクリニックに比して、医療法人の医業収益高経常利益率が低いのは、法人の費用には、理事報酬が含まれているからです。
(数値は、TKC医業経営指標平成21年版)