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坂本孝司の経営雑記帳

世界的な金融危機と会計のグローバル化(4)2008:11:05:09:49:50

 驚くべきことに、グローバルスタンダード化のポイントであった「時価会計」を、その提唱者であるアメリカが一部凍結を宣言し、わが国も時価主義会計の一部凍結をこの9月の中間決算期から行うことになりました。
 なんという変わり身の早さ。節操がないとしか言いようがありません。平成14年3月から開催された中小企業庁の「中小企業の会計に関する研究会」で、会計のグローバル化を錦の御旗にして「時価主義導入」の論陣を張った、多くの学者や委員の方々はどのようにして今回の事態を見ているのでしょうか。私たちは少数派でしたが、同研究会で「行きすぎた時価主義は問題である。中小企業には時価主義ではなく、取得原価主義が適切である」と主張しました。その頃は、こんなに早く「事の是非」が明らかになるとは、考えてもいませんでした。

世界的な金融危機と会計のグローバル化(3)2008:10:28:10:02:30

 重要なことは、歴史的には、会計基準は一定の国土的範囲の条件下で育まれた取引慣行等に照準を合わせる形での問題解決型の基準として形成されてきたことです。諸外国においても同様であって、会計基準は会計という領域における文化を反映したもの、言い換えれば、ローカルな性格を有するものであるはずのものです。
 しかし国際的な資金市場から資金を調達する企業にとっては、ローカル的な会計では意味がありません。かつてニューヨーク証券取引所を訪れた際に、「世界のお金をここへ」というスローガンが掲げられていました。アメリカはこうした目的を達成するために、企業間の比較可能性を容易にする、会計のグローバルスタンダード化を図り、世界的な資金移動を可能としていったのですね。そしてそのグローバルスタンダード化のポイントが「時価会計」であったわけです。

世界的な金融危機と会計のグローバル化(2)2008:10:20:15:28:31

2 わが国の対応
 アメリカ発の金融危機は、実体経済(モノ作りなどの基本的経済活動)の何十倍にふくれあがった金融経済(金融派生商品であるデリバティブ、M&A(企業の合併・買収)など企業そのものを商品化しての売買)が行きすぎたことに原因があります。それに荷担したのが「会計のグローバルスタンダード」の名のもとでの、アメリカの会計戦略です。例えば、企業のM&Aに関しては、時価主義を原則とする会計が格別に重要となります。なぜならば、時価主義で会計をすれば、その企業の価値が一目瞭然に分かり、M&Aをする際の価格交渉が容易になるからです。
 先に触れたように、わが国の会計制度は、平成8年に始まる金融制度の改革と相照応する形で、平成9年~11年の僅か三年間に夥しい数の新しい会計基準が、「国際会計基準」との関連で導入され、一般に「会計ビックバン」といわれる大きな変化を遂げました。この会計ビックバンの特徴は「時価主義」を基本に財務諸表を作成するところにあったのです。
 しかしながら、わが国の、現実の中小企業団体の実務的対応は、必ずしも正しい方向への動きを示しませんでした。すなわち、かかる会計ビックバンの煽りを受けて、わが国の中小企業の会計制度も国際的に見てグローバル化が遅れているとされ、中小企業に対しても新会計基準の導入が始まり、全国の各税理士会では会員向けに中小企業への新会計基準導入に関する研修を繰り返し行う状況がみられるようになったのです。